廻し(まわし)は相撲を取るときに身につける、ふんどしの一種。まわし、回し、相撲褌とも表記され、外国人競技者の間では「相撲ベルト」とも呼ばれている。一部の裸祭りでも使用されている。
稽古廻しや幕下以下の力士、アマチュア競技者が締める廻しは雲斎木綿または帆布と呼ばれる硬い木綿布で出来ている。これは転倒時の怪我の防止と身体の保護や取組みでの技を掛けることを目的としている。
廻しの締め方 [編集]
着装の際には通常補助者を必要とし、以下の手順で着装する(アマチュア用木綿廻しの場合)。 長さは6m(青年男子用)程度、幅45cm程度の帆布(消防のホース生地などに用いられる)を四つ折りにして、前部(前袋)は二つ折りで前端を押さえて陰部を覆い、八折りにして股間を跨ぎ、その後の腰回り部分(横褌)から再び四つ折りにして左回りに身体に3〜4回巻き付けて、最後に後端を八折りにして縦褌(たてみつ)に巻き付けて結ぶ。基本は前垂れ式の六尺褌の締め方に似ているが前垂れは畳んで横褌に挟み込み、わずかに覗かせるだけである。補助者は、後立褌の下に巻き終わりの先端を通して上に引っ張り上げる。着装者は腰を落とし締め上げる。ここを疎かにすると競技中に廻しが解けてしまう原因となる。ただし体に負担が掛かるほど締め上げる必要はない。 着装時には下に何も着けないことが原則であるが、力士の場合は化粧廻しを締める際には下に六尺褌を締めているといわれる[1]。
解く時はその逆となる。ただ、長さは自分のウエストの約7〜10倍の長さとされ、4.5m〜9m程度と個人の体型によって異なる。主に白色が多いが、一部では黒色や水色等がアマチュア相撲競技者の間で用いられている。
廻しの取り扱い [編集]
新品の廻しは糊が効いていて、非常に堅く、稽古を通して発汗する汗を吸い込むことで身体に馴染むようになる。廻しに付く汗や泥の汚れが各競技者で違うことで廻しの使用者の特徴が出てくる。このため、相撲道場などで干し掛けられた各競技者の廻しの中から容易に自分の廻しを見分けることができると言われている。
締め込みは材質の問題から、帆布の廻しはへたってしまうため、また験担ぎの意味からも廻しは基本的に洗濯をしない。ただし、木綿製のものは新品だと型崩れ防止のため洗濯糊で糊付けされている場合があるので、これを落とすために洗うことがある。
洗濯しない理由は、特に安価な木綿廻しの場合、使用に耐えないほどの汚れの場合には廃棄して新調してしまうからという側面もある。洗濯を実施している相撲教室などもある。
なお、洗濯しないからと言って湿ったまま放置して良い訳ではなく、使用後は泥を落として天日干しをすることが推奨される。前袋、立褌になったところの内側(陰部が当たっていたところ)を消毒用アルコールで清拭することもある。
アマチュア相撲では廻しの下には何もつけず、素肌に締める。廻しの衛生対策は日干しをする程度だけで、原則洗濯を行わない(洗濯を重ねると生地が緩んで廻しの持つ身体の保護機能を失う)ことから、衛生上の理由で相撲用サポーターや六尺褌、または水着を用いて、その上から廻しを締める競技者もいる。また、近年では相撲が海外や女性(新相撲)の間でも普及するようになったことから、外国人競技者には臀部の露出を嫌い、スパッツ、ショートパンツやレオタードの上から廻しを締める例も出ている。
大相撲では絹製の廻しで相撲を取るが、稽古ではアマチュア相撲同様、雲斎木綿の廻しが用いられている。稽古用の廻しの下には何もつけず、素肌に締めている。 大相撲では廻しの色は厳密に区別されており、十両以上の力士だけが白色で、幕下以下の力士は黒色の廻しと決められている。十両以上の関取は稽古用の白い廻し(泥廻し、木綿)と取組用の繻子廻し(締め込み、絹)の2種類を使い分ける。上下関係が厳しい番付社会の相撲界で、力士は初めて白い稽古廻しを締めたことで自分の番付が昇したことを感じると言われている。なお、普通の稽古廻しを締めた力士に混ざって締め込みで稽古をする力士の映像が存在するがこれは新十両が決定した力士が締め込みに慣れる目的で行なっているものである。
日本相撲協会による規定では紺・紫色系統のものを使用することと定められているが、カラーテレビの普及と共に色とりどりの廻しが咲き乱れることとなり、実際は黙認されている。昭和32年11月場所で玉乃海太三郎が締めた金色の廻しが「カラー廻し」の始まりとされる。昭和33年9月場所、協会規定により関取資格者は廻しの色を黒か紺に統一することにしたが、その後も輪島や高見山など個性的な色調の廻しで人気を博した関取は少なくない。
簡易廻し、相撲用サポーター等 [編集]
学校で相撲を履修している場合やアマチュアの選手の場合においては、スパッツやショートパンツの上から締めたり、相撲パンツと呼ばれる腰部に横廻しと同じ位の太さのベルトが巻かれたショートパンツで代用する事もある。
小学生以下用に簡易廻しと呼ばれる、ショートパンツの上から着装する専用のものもある。最近は相撲用サポーターという商品も販売されている。
なお、ショートパンツの上から廻しや簡易廻しを着装する場合には、格闘技である事を考慮して、なるべく体に密着したものを使うことが望ましい。同様にボタンやフックのような金具類が付いていないほうが受傷し辛いと言える。
スパッツやショートパンツの上から締める場合や相撲パンツ、簡易廻し、サポーターを使用するメリットは、汗などを吸い取ってくれるため、清潔を保ちやすい。
デリケートな部分であるため、直接締めると予期せぬダメージを負う可能性があり、これを低減できる。
臀部を露出することに抵抗のある人であっても相撲を楽しむことが出来る。(小学生女子の場合は体操着に簡易廻しという組み合わせが、新相撲競技に於いてはレオタードに廻しの組み合わせが一般的)
廻しの下に一枚あるため、万が一解けてしまっても局所露出の可能性が低減できる。ただし、局所が見えなかったからといって「不浄負け」の反則が回避されるわけではない。
相撲パンツ、簡易廻しに限ったことだが、極めて安価であるため、金銭的な負担が少ない。ただし、廻しそのものも高級品を除けば他のスポーツのユニフォームと比べて特に高価という事もない。
奉納相撲等で、男子の取組の際にショートパンツの上から廻しを着装する事を認めず、裸体に本式の廻しとしている所もある一方、特にそういったことに拘らないで行事を執り行う神社も近年は増えている。
使われ方 [編集]
廻しは、相撲の取組中において、力士が握りこんで力を出すために使われる。主として相手力士のそれを掴んで引き寄せつつ、押し込む。あるいは廻しを片手に掴んで投げる。
なお、相手の前袋を掴んで引いたり、横から指を突っ込むことは禁じ手とされている。後立褌の場合は、行司(審判)が注意して組み手を変えさせられる。
廻しは基本的に固く締めるが、わざと緩めにすることによって廻しを取った相手の力を十分に出させないものもいる。「ユルフン」と呼ばれ、ときに非難の対象となる。取組中に廻しが緩んで前廻し(前褌(まえみつ)、前袋)が外れて落ちると反則負けとなる(不浄負け)。
化粧廻し [編集]
化粧廻し(けしょうまわし)は、大相撲の関取が土俵入りの際に締める儀式用の廻しである。長さ8m、幅68cmの長い博多織の布の先端に豪華な刺繍と馬簾(ばれん)の付いたエプロンのような大きな前垂れを持つ高価な廻しである。横綱の場合は本人の分の他に太刀持ち、露払い役の力士の分も含めた三点セットである場合が多い。協賛企業や出身校などのスポンサー(後援会、タニマチ)から贈られるものが多いと思われる。
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新弟子が前相撲を終え、新序披露される際にも化粧廻しを着けて土俵に上るが、その際には部屋の兄弟子や親方から借りて着ける。
また、諏訪大社など奉納相撲で着けるところもある。
尚、前垂れ部分のみで構成され、エプロン状に仕立てられたものが祭用や子供用に作られる。歌舞伎や一部の歌舞伎舞踊でも使われ、伊達下がりと呼ばれる。
さがり [編集]
かつて幕内力士の取組には、上述の化粧廻しが使われていたことが当時の錦絵等の記録に残されているが、前垂れの部分が邪魔になり不便であったことから、現在の締め込みに変わった。その際に外された前垂れの名残として、さがりが取り付けられた。かつてはただの紐であり、前垂れ同様に廻しに固定されていたため、これで指を負傷する力士が多く、この対策として現在の抜けるさがりになった。なお現在関取のさがりはふのりで固められている。取組中に折れることが多いが、濡らした後まっすぐにに戻して干しておけば直る。本数は力士の体格によって変わるが、必ず奇数と決められている。
「廻し」に関連した諺や成句 [編集]
他人の褌で相撲を取る。
緊褌一番
そのほか、前出の「ユルフン」なる語句は、政府などが外交問題などで弱腰な態度を取っている際に新聞・雑誌記事では、その事に対する批判的な文脈で登場することがある。